籠の中で飼われている…?

これもまた、仕事の昔ばなし。中学校時代に憧れていた作家さん(男性)のお仕事を、ある日念願かなって出来ることになった。

どんな方なんだろうと、夢を膨らませて打ち合わせ場所にいくと、少々体格のよい中年の女性が一人。
名刺を渡されると、肩書はマネージャー、作家さんと同じ苗字がカッコ書きで書かれていた。つまり仕事の場合によりけりで、マネージャーと夫人の立場を使い分けているようだ。

(ちなみに…お話を聞くと、夫人はけっこう良いところ育ちのようで、少々羽振りがよさそうな印象。

私は作品にリスペクトしてその作家さんが好きなだけで、大変申し訳ないくらい…その作家さんの具体的なプライベートにはとくに興味がなかった。

作家で飯が食えるのは厳しい、世知辛い世の中なので、リアルなことを言うと、男女関係や夫婦関係は様々であろう。(クリエイターの「ふ~ん…」みたいな夫婦関係や男女間をいくつか見てきた。)
私は中学生の夢見る少女ではなく、すでに大人の感覚を兼ね備える年頃になっていた。


さて、念願のお仕事がはじまった!楽しい思い出深い作品になるに違いない。憧れの作家さんから直々にアドバイスを頂くことがあったら、天に昇る嬉しさだろう。


実際は…ちょっと拍子抜けだったのだけど、マネージャー兼夫人から、作家さんの意向が間接的に告げられ、そのメールを確認しながら、作品づくりを進める形となった。

まぁ、でも憧れの方の作品に携われるのだから、とても幸せさ…!
私は曇り空になった心を、無意識になだめた。

いやしかし…この曇り空はやがてモヤモヤ広がっていくことになる。

夫人との間接的なメールのやりとりが続き、メールでは意向のニュアンスが伝わらないのでお電話しましょう、ということになった。

電話をすると、夫人の声。普通にやりとりが始まると、電話の向こうでモソモソ声が聞こえる。
はっ…!もしや、これは作家さんでは?


てか、電話の向こう口にいるのなら、直接私にしゃべれや…!!!


と、思った。


なんで直接しゃべらないんだろう。一言「こんにちは」とかいって、「もっとこうしてほしいんです」とか言えばいいじゃん。
面を向き合わせないなんて…いくら私が小娘だからって…失礼やろーーーっ!!!(極端に内気ならともかく、外に顔出してるし、作品からの印象でそれはありえなかった。)

小学校時代、お母さんの背に隠れて、間接的にモソモソしゃべっている自分を思い出した。
母「自分の口で、ちゃんとお友達に言いなさい。」


頭の片隅で、「サーーーッ」と、完全に、心が引いていく音が聴こえた。

私は、憧れてた作家さん「と」仕事をしたわけではなく、作家さん「の」仕事を間接的にしたまでであった。虚しかった…。


その後、作家さんとイベントでご挨拶する機会があった。
ご本人は決して悪い印象はなかった。作家さん自ら手を差し出し握手をしてもらい、とても清々しい笑顔だった。


でも、裏側を垣間見てしまうと、つらい…。


それに、「仕事が終了した後はもう、この娘に気を使わんでもいいや」と言わんばかりの、夫人の態度が急に風当たりの冷たいものに豹変した。

だからそれ以後、その作家さんの作品を手に取ることはなくなってしまった。


しかし、直接しゃべらないのは、本人の意向ではないのかもしれない。
異性で「ファン」だという私に警戒して、夫人は直接の関りを遮断していたのだろうか?
もしくは夫人に、完全に「下」に見られて、ナメられていたか。(その印象は、やりとりの中で多少あった。)
夫人が必要としたのは私ではなく、私の聞こえのよい経歴(手前みそですが)であったのかもしれない。

どのみちその作家さんは、夫人の”籠の中の鳥”であり、私以外にもきっと同じ対応をされた人がたくさんいるんだろうなとも…どことなく感じ取れる。


作家と夫人間の、奇妙な上下関係。(依存関係?)
私の籠の中で鳴きなさい、オホホホホ…的な?


聡明な印象の作家さんは、それら全部含めて、分かり切って飲んでいることなのかもしれない。

でもそれは、片っ端から焼き畑農業のように信頼関係を崩す自滅行為だ。
いくら才能があってもさぁ………。
やはり直接面を向き合わせることで、仕事は始まるものだから、場合によって相手を猛烈に怒らせる。


本当は、普通に直接しゃべりたかったのだろうか?どうなんだろう。



ここまで書いて思ったが、夫人は岡田あーみんの漫画「ルナティック雑技団」に出てきそうな濃いキャラだな。